血管には動脈と静脈があり、静脈は心臓に血液を戻す働きをするために、血管の中に逆流防止弁がついています。
足の静脈は歩く時など足の筋肉が収縮、拡張をくり返すたびに血液が筋肉によりしぼり上げられ心臓へ戻ります。足の静脈は深部静脈と表在静脈とがあり、深部静脈は筋肉の中を、表在静脈は皮膚の下を走っています。
静脈瘤は表在静脈の弁の障害により血液が下方へ逆流して、膝から下に血液が溜まってしまい血管が膨れてしまったものです。
静脈弁が正常に機能していれば血液はきちんと心臓に向かって流れます。
静脈弁が正常に機能していないため、血液が心臓に戻れず逆流してしまう。
これが「下肢静脈瘤」の原因です。
何時の頃からか足の血管が腫れてくる下肢静脈瘤は、ほとんどの人が最初は病気だとは思っていません。
ところが、何年も放置してしまうとさまざまな症状が現れながらだんだんと病気としての本性を現してきます。
病気の難しい理論はさておいて、静脈瘤にはどんな症状があるのか、そして、ちょっと足を見た時にこんな光景を見たら「治療が必要な静脈瘤です」という写真を見てみましょう。
典型的な下腿にできた静脈瘤です。
ほとんどの静脈瘤は下腿内側を中心に血管拡張が起こり、だんだん膝から上に広がってきます。
静脈瘤が原因で下腿に湿疹ができています。
痒みが強く掻きこぼして、さらに湿疹が悪化しています。
静脈瘤を治さないと湿疹は治りません。
静脈瘤に血栓性静脈炎という炎症が起こったものです。
下腿の黒ずんだ部分を中心に強い痛みを訴えます。
静脈瘤を治さない限り、静脈炎は繰り返して起こります。
静脈瘤が原因で下腿にできた皮膚潰瘍です。
痛みが強く、細菌感染を起こすと重症になります。
自分の足をよく観察し、以下の項目をチェックしてみましょう。いくつかあてはまる項目があったら下肢静脈瘤かもしれません。
静脈瘤では足にできるだけ血液を溜めないようにすることが大切です。じっと立っていることはもっとも避けたいことです。立ち仕事の人に静脈瘤が多いことはよく知られています。具体的に次のような注意を守って生活してください。
立ち仕事では1時間の仕事で5~10分、できれば足を上げて休息を取ってください。
歩くことや運動で足の筋肉を使うことで、筋ポンプ作用を高めます。しかし、すでに静脈瘤がある場合には弾性ストッキングを履いて歩行、運動をすることが大切です。
※適切な弾性ストッキングを選ぶことも重要です。医師にご相談ください。
就寝時は、心臓より少し足を高めにして休んでください。枕や座ぶとんを膝の下まで入れ、膝が少し曲がるようにします。
※膝が伸びていると疲れますし、静脈の環流によくありません。
足に傷をつくらないよう注意しましょう。静脈瘤のある人は、特に足がかゆくなりがちです。足を掻いて傷をつけますと、色素沈着や潰瘍の原因になります。
足の血液は、筋肉内を流れる深部静脈と、皮膚の下を流れる表在静脈で足から心臓まで流れます。
足先の血液を地球の引力に逆らって、1m以上高い位置にある心臓に流す為に静脈には逆流防止弁がついてます。
この表在静脈の逆流防止弁が壊れて血液が逆流し、上から下に落ちた結果静脈が怒張してしまったものが下肢静脈瘤です。
足の表在静脈の主たるものは、大腿内側を走る大伏在静脈と、膝から下のふくらはぎの真後ろを走る小伏在静脈の2本があります。
ほとんどの静脈瘤は、大伏在静脈と小伏在静脈のどちらか、または両方の逆流防止弁が壊れ、弁不全の状態になったことにより発症します。
長時間の立ち仕事や、女性では妊娠・出産が静脈瘤の発症と進行の要因となります。
そのほか、深部静脈と表在静脈を交通する不全交通枝と呼ばれる静脈が異常に発達して静脈瘤の原因となる場合もあります。
また比較的稀ですが、クリッペル・トレノーネイ症候群という先天性の静脈瘤もあり、この場合は足の外側に静脈瘤ができて、皮膚に母斑といわれる特殊な症状を伴うのが特徴です。
足の静脈では、血液が足の先から心臓の方向に流れています。
地球の引力で血液が逆流しないように静脈内に逆流防止弁が備わっていますが、この逆流防止弁が壊れて血液が下方に逆流するために起こる病気が静脈瘤です。
そこで、外来の診療では、足の何処の血管が逆流して静脈瘤の原因となっているのかを診断するのが大切な作業になります。
以前は、造影剤を点滴で足から入れて静脈造影を行いましたが、最近は点滴などの侵襲の無いCT撮影で静脈瘤を簡単に診断できるようになりました。
ドップラー血流計による弁不全の検査診察を行います。
3DCT検査により、超音波検査よりも静脈瘤を正確に映し出すことが可能です。
3DCT画像による静脈瘤の状況と症状によって、どのような治療が適切かを判断いたします。
また、良質な画像をご覧いただきながら、ご納得いただけるようにご説明いたします。
造影剤不使用で痛くないため、安心して受診ください。
当院では「手術治療」と「保存的治療」を推奨しております。
その2つの治療方法についてご案内いたします。
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術とは、静脈瘤発生の原因となる大伏在静脈や小伏在静脈の血管内空にカテーテルを挿入し、レーザー光線や高周波(音波)で血管内壁を焼いて、血管を焼き縮めて閉塞する方法です。
下肢静脈瘤は大・小伏在静脈を血液が逆流するために起こる病気ですから、これらの血管を閉塞させて血液の逆流を無くして治療をする事になります。
血管内焼灼術は、血管を完全に取り除くストリッピング手術と比較すると完治性にはやや劣るものの、傷が少なく美容的であり、また日帰り手術に適しているなどの理由で日本でも普及してきています。
レーザー治療では、血管の太さに応じてレーザーの出力を調整する必要があり、また蛇行する血管に対してレーザー光線は直線でしか進まないため、血管壁を均一に焼灼する事が困難です。
レーザー治療は血管内にレーザーを照射して血管内壁を300~1200度に熱して血管を閉塞するものですが、温度が高い為に焼灼する血管に隣接した組織に熱が伝播して、術後の「ツッパリ感」「熱感」「痛み」「皮下出血」の原因となります。
日本では平成23年1月から保険適応となり普及しましたが、上記のような問題が残っています。
平成26年6月1日より保険適応となった高周波による焼灼術は、静脈内に挿入したカテーテルの先端部分にある全長約7cmの金属コイルに460KHzの高周波を流して120℃に発熱させ、静脈を熱変性させ閉塞させる方法です。
温度センサーによるフィードバックが働いて、治療時に血管内壁の温度が120℃以上にならないようになってます。
また、血管壁にほぼ均一に120℃の熱処理がなされるのも高周波治療の特徴の一つです。
7cmの治療に20秒を要して終了し、隣の7cmを焼灼します。5~7箇所(2分前後)の焼灼で片足の治療が終了します。
血管壁が高温となるレーザーと異なるため、前述した術後の合併症が少なくなり、より患者さんに優しい治療となってます。
高周波アブレーションカテーテルによる治療時間は、片足20~30分程度で、「日帰り」による手術も可能です。
また、重症の場合はストリッピング手術との併用など、入院設備もあるので、患者さんに最適の治療方法の提案を行うことができます。
ストリッピング手術は、血液を逆流させている血管内にワイヤーを通して、太ももかふくらはぎの血管を抜き取る方法です。
大きな静脈瘤も確実に治療し、さらに小さな切開をして残っている静脈瘤も切除治療します。
全身麻酔もしくは局所麻酔を使用します。
入院期間は2〜3日で、軽傷例では局所麻酔を用いて日帰り手術も可能です。
弁不全を起こしている静脈の本幹を縛ったうえで、切り離す手術です。
歯科治療の時に使用する局所麻酔を使用して、20分前後で終了します。日帰り手術(入院不必要)が可能です。
基本的にそけい部(股のつけ根)またはひざ裏に2cm程度の傷が一箇所で終わります。
ストリッピング手術をする代わりに、硬化剤という薬剤を静脈内に注入して静脈を詰めてしまう方法です。
詰まった血管は数ヶ月かかって退化し、やがてほとんど分からなくなってしまいます。
問題のあった静脈がつぶれることで血液が溜まらなくなり、静脈瘤が消失します。
外来で10分程度でできます。
内腸骨静脈系の静脈瘤という比較的希な静脈瘤の治療法として効果的です。
また、高位結紮術やストリッピング手術の追加治療としても使用します。
足の静脈を30mmHg前後で圧迫するストッキングです。
最初は履く作業が煩わしいと訴える人もいます。
静脈瘤の根本的治療にはなりませんが足のむくみ痛み・だるさなどを軽減し、静脈瘤の患者さんのみならず長時間の立ち仕事をする人が使用すると足の疲れが良くなります。
※静脈用の弾性ストッキングは数社からの製品があります。料金は3,000円前後ですが、保険は通らず自費で購入していただく事になります。
Qストリッピング手術で血管を抜き取って大丈夫でしょうか?
A血液は深部静脈を流れるので大丈夫です。
足の静脈は、筋肉の中を走る深部静脈と、皮膚の下を走る表在静脈があります。静脈瘤になるのは表在静脈です。
血液の大半は深部静脈を流れて心臓に帰りますので、表在静脈を抜きとっても大丈夫です。
Q手術は日帰りでも可能でしょうか?
A日帰りでも可能です。
手術を受けていただく場合、日帰りで行うか入院するかは、静脈瘤の重症度や手術の方法により選択されます。
日帰りにするか、入院手術にするかは患者さんと相談しながら決めております。
Q入院期間は何日ぐらいでしょうか?
A最短は1泊2日ですが、ほとんどは2泊3日です。
これも、静脈瘤の重症度や手術の内容によりますが、ほとんどの患者さんは2泊3日で退院されます。
無理に早く退院する必要もありませんが、長々入院する必要もありません。
Q手術後は何時ぐらいから仕事ができるのでしょうか?
A仕事の内容によりますが、外来手術の場合は術後1〜2日、入院手術は退院後2〜3日で仕事に復帰される方がほとんどです。
Q費用はどのくらいかかるのでしょうか?
Aストリッピング手術、高周波治療では、3割負担の方で外来手術の場合は約3万円(両足では約6万円)、入院手術の場合は約8万円(両足では約12万円)です。
1割負担の方は、前記の3分の1の料金になります。
Qストリッピング手術と高周波などのカテーテル治療の違いは何ですか?
A静脈瘤の治療として完成度が高いのはストリッピング手術です。
レーザーや高周波治療によるカテーテル治療は完成度はやや劣るものの、局所麻酔のみで手術が可能であるため、入院設備を持たない施設で行われています。
当院は入院・外来手術のどちらも可能なので、静脈瘤の重症度に応じて最適な治療法を選択しています。
Q何歳ぐらいまで手術が可能なのでしょうか?
A特に年齢制限は有りません。80歳以上の方でも多くの方が当院で手術を受けていらっしゃいます。
Qレーザー治療と高周波治療の違いは何ですか?
A基本的には同じです。
レーザー治療はレーザー光線を使用し、高周波は音波を用いて治療します。
以前はレーザー治療が主流でしたが、最近は高周波治療が主流となって来てます。
Q静脈瘤は遺伝するのでしょうか?
Aはっきりとした遺伝は証明されていませんが、静脈瘤の体質の家系はあります。
今まで多くの患者さんの手術をしてきましたが、お母さんと娘さん両方とも静脈瘤で手術をした組み合わせは何組か有りました。
それに反して、お父さんと息子さんの組み合わせはほとんど有りません。
女性は妊娠、出産をするのが静脈瘤の原因となりますが、それにプラス家系の要素が加わると思います。
Q硬化療法だけで治る静脈瘤もありますか?
A有ります。
大腿(太もも)の後ろにできる静脈瘤で内腸骨静脈という静脈につながっているものは、硬化療法のみで治療します。
また、足にくもの巣のようにできた静脈瘤も硬化療法のみで治します。